海洋散骨を検討している人の中には、「海洋散骨って違法なんじゃ…」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか?
中には、「遺骨を捨てる=遺棄した」と捉えられてしまうことを危惧している人もいるでしょう。
結論から言うと、海洋散骨自体は違法ではありません。
ただし、海洋散骨は正しい手順で正しい方法で行う必要があります。
そこでこの記事では、海洋散骨はなぜ違法ではないのか、どこからが違法になるのか、海洋散骨で守るべき条件やトラブルになるうるケースなど詳しく解説します。
海洋散骨は違法ではありません
冒頭でもお話したとおり、海洋散骨は違法ではありません。
なぜなら、日本には散骨そのものを禁止する法律がなく、国もこれを容認する姿勢を示しているからです。
実際、海洋散骨は1991年に初めて公に行われて以来、三十年以上にわたって葬送のひとつとして受け入れられ、今では毎年多くのご家族が選んでいます。
ただし、どんなやり方でも許されるわけではありません。以下のような行為は違法やトラブルの原因になります。
- 遺骨を粉状にしない
- 条例で禁止された海域で撒く
- 人目につく場所で無造作に行う
適法と違法を分けているのは「海に撒いたかどうか」ではなく「守るべき条件を満たしていたかどうか」です。
そこで、次章では「なぜ違法にならないのか」について深堀りしていきます。
なぜ海洋散骨は違法にならないのか
海洋散骨が違法にならないのは、以下の3つの理由があるからです。
墓地埋葬法に散骨を禁じる規定はない
遺骨の扱いを定めた墓地埋葬法には、散骨を禁止する条文がありません。
この法律が制定されたのは昭和23年、まだ土葬が広く行われていた時代です。当時の目的は、土葬によって伝染病が広がることを防ぐことにありました。

焼骨を粉にして海や山に撒くという弔い方は、そもそも想定されていなかったのです。
墓地埋葬法が規制しているのは、墓地以外の場所に遺体や遺骨を埋葬すること、つまり土の中に埋める行為です。
粉状にした遺骨を海に撒く散骨は、この「埋葬」にあたりません。だから法律の規制対象から外れます。
東京都をはじめとする自治体も、国の見解として「墓地埋葬法に散骨を禁止する規定はない」という趣旨を明らかにしています。

刑法190条と1991年の法務省の見解
散骨で唯一問題になりうるのが「遺骨遺棄罪」ですが、葬送として節度をもって行う限り、この罪には問われないと解釈されています。
刑法190条は遺骨を捨てる行為などを罰する条文で、その目的は社会の宗教的な感情を守ることにあります。

故人を悼む気持ちのもとで静かに行う散骨は遺骨を粗末に捨てる行為とは性質が異なる、という考え方です。
この解釈のきっかけは、1991年10月に神奈川県の相模灘沖で行われた、日本で初めての海洋散骨でした。ある市民団体がこれを実施した際、散骨が遺骨遺棄罪にあたるかどうかが問われ、当時の法務省は、「葬送の一つとして節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪には当たらない」という趣旨の見解を示したとされています。
この見解が、海洋散骨が容認されてきた出発点になりました。
ただし、正確にお伝えしておきたいことがあります。
この1991年の見解は非公式なもので、文書として公開・保存されていません。
後になって法務省が、「そのような見解を出した事実は把握していないと述べた」とも伝えられており、公式な見解としての位置づけは、実ははっきりしていないのです。
多くの解説が「法務省が認めた」と言い切っていますが、法的な裏づけとしては、これ一つに頼るには心もとない面があります。
だからこそ、次にお伝えする国のガイドラインの存在が大きな意味を持ちます。
国がガイドラインを示している
国の機関が散骨のルールを公的な文書として示していること自体が違法ではないことの確かな裏づけになっています。
2021年3月30日、厚生労働省は散骨に関するガイドラインを公表しました。ここでは、散骨事業者が守るべき事項として以下のように整理されています。
- 遺骨は形状がわからなくなるまで粉状に砕くこと
- 撒く場所に配慮すること
- 関係者や自然環境に配慮すること
- 文書で契約を交わすこと
- 安全を確保すること
さらに2023年9月には、国土交通省が海の上で散骨を行う際に守るべき海事関係の法令を解説する文書を公表しました。
曖昧なままだった1991年の見解を、国が公的な文書というかたちで実質的に追認したのが、この二つのガイドラインです。

国が正面からルールを整えているという事実は、散骨が違法ではないことを前提にしていると読み取れますね。
個人で海洋散骨をしても違法にならない?
個人での散骨も法律上は可能ですが、判断のすべてを自分で背負う分リスクは高くなります。
業者に頼まなければ違法になるということはありません。
ただ、先にお伝えしたとおり、個人が拠りどころにできる明文のルールは存在しないため、事業者向けのガイドラインを、いわば手本として自分で守っていくしかないのです。
具体的には、以下のような判断を全て自分でくださなければなりません。
- 粉骨が十分かどうか
- 選んだ海域が条例に触れないか
- 漁業権のある海ではないか
- 船の運航に問題はないか等
ひとつでも見落とせば、違法やトラブルになる可能性があります。だからといって、すべてを一人で抱え込む必要はありません。
不安な人は、粉骨や海域の選定といった判断の難しい部分だけでも、ガイドラインを守っている業者に任せるという選択があります。

「散骨の当日は自分たちの手で見送り、専門的な確認だけを頼る」という組み合わせ方もできます。
大切な人を送り出すその日を、不安ではなく安心のなかで迎えるために、頼れるところは頼るという選択を、どうか自分を責めずに選んでください。
海洋散骨が違法やトラブルになるケース
ガイドラインに沿って海洋散骨を行えばトラブルになることはありません。
ただ、これはあくまで一定の節度が保たれている場合に限られるからです。
どこが境目になるのかを、具体的に見ていきましょう。
粉骨をせずに撒く
遺骨と分かる形のまま撒くと、遺骨遺棄罪に問われる危険が高まります。
骨の形状が残ったまま海に撒く行為は、故人を送る儀式というより、遺骨を捨てる行為と受け取られかねません。
厚生労働省のガイドラインでも、遺骨は形状が分からなくなるまで粉状に砕くこととされており、実務では2ミリ以下が一つの目安になっています。
粉骨は、故人の尊厳を守ると同時に、あなた自身を法的な危うさから遠ざける欠かせない手順です。
節度を欠いた撒き方をする
人目につく場所で無造作に撒くと、違法と判断される可能性があります。
海水浴場のすぐそばや、人が集まる浜辺の近くで散骨をすれば、そこで過ごす人々の目に触れ、宗教的な感情を害することになります。刑法190条が守ろうとしているのは、まさにこうした社会の感情です。
故人を悼む静かな気持ちで、目立たない沖合で行うという配慮が必要になります。
条例で規制された海域で行う
自治体の条例に反する散骨は、解釈の問題ではなく、明確な違反行為になります。
国の法律とは別に、独自に散骨を規制する条例を設けている自治体があります。
そうした地域で条例に反して散骨をすれば、それはれっきとした違反です。
漁業権のある海域で行う
漁業者が権利を持つ海で散骨をすると、損害賠償を求められることがあります。
これは刑罰ではなく民事上のトラブルです。
養殖場や漁場として使われている海域で散骨をすれば、風評被害などを理由に賠償を請求される可能性があります。

撒いた本人に悪気がなくても生活のかかった漁業者にとっては深刻な問題ですからね。
海洋散骨を合法的に行うための条件
粉骨・海域・節度・配慮の4つを満たせば、海洋散骨は安心して行えます。
前の項目で挙げた違法やトラブルの原因を裏返すと、守るべき条件がそのまま浮かび上がってきます。
| 条件 | 具体的な内容 | 満たさないと起きること |
|---|---|---|
| 粉骨 | 遺骨を形が分からなくなるまで粉状に砕く(目安は2ミリ以下) | 遺骨遺棄罪や周囲の反発の対象になりやすい |
| 海域 | 陸から離れた沖合を選び、条例のある地域を避ける | 海水浴場周辺や規制海域は条例違反やトラブルにつながる |
| 節度 | 故人を送る儀式として、目立たない場所で静かに行う | 節度を欠くと違法と判断される余地が生まれる |
| 配慮 | 自然環境、漁業、周囲の人への配慮を欠かさない | 漁業者との民事トラブルや近隣の反発を招く |
この4つを満たしていれば、海洋散骨が違法になる心配はほとんどありません。

故人を大切に思う気持ちがあれば自然と守れると思います。

海洋散骨よくある質問
最後に、海洋散骨の違法性をめぐって、よく寄せられる疑問にお答えします。
海に散骨するのに許可は必要?
海洋散骨を行うために、役所への申請や許可は必要ありません。
散骨を許可制とする法律がないためです。
ただし、規制条例のある海域は避ける必要があるため、事前に自治体へ確認しておくと安心です。
遺骨は全部撒いてもよい?
すべてを撒いても問題はありませんが、一部を手元に残す方も多くいらっしゃいます。
全部を海に還すか、いくらかを手元供養として残すかは、ご家族の気持ちで決めていただいて構いません。
一度撒いた遺骨は戻せませんので、あとで寂しくならないよう、家族で話し合って決めることをおすすめします。
関連記事:手元供養とは?種類・費用・始め方をわかりやすく解説
川や湖に散骨してもよい?
川や湖への散骨は避けてください。
厚生労働省のガイドラインでも、河川や湖への散骨は望ましくないとされています。
生活用水や漁業に関わる場所であり、トラブルの原因になりやすいためです。
海への散骨と同じ感覚では行わないよう注意が必要です。
家族が個人で撒いても大丈夫?
ご家族が個人で撒くこと自体は違法ではありません。
ただし、粉骨や海域の確認をすべて自分たちで行う必要があり、判断を誤るとトラブルにつながります。
不安がある場合は、難しい部分だけでも業者に相談してみてください。
ペットの遺骨も海に散骨できる?
ペットの遺骨は、人の遺骨のような刑法上の制約がないため、海洋散骨を行いやすいとされています。
それでも、環境や周囲への配慮、漁業権のある海域を避けるといった点は、人の散骨と同じように守る必要があります。
海洋散骨で逮捕された事例はある?
正しい手順で行われた海洋散骨で、刑事罰を受けたという事例は確認されていません。
実際にトラブルとして表面化してきたものの多くは、海ではなく陸地での散骨をめぐるものです。
近隣の住民が、農作物への風評被害や地価の下落を心配して反対し、争いになった例が知られています。
海洋散骨で現実に起こりうるのは、逮捕といった刑事の問題よりも条例違反や漁業者との民事上のトラブルです。
言い換えれば、条件さえ守っていれば必要以上に身構えることはありません。
まとめ
海洋散骨は、粉骨をして、沖合で、故人を送る儀式として静かに、周囲に配慮して行う限り、違法ではありません。
日本には散骨を禁止する法律がなく、国もガイドラインというかたちでルールを示しています。
もし不安な人は、粉骨・海域・節度・配慮の4つを心にとどめておけば大丈夫です。
また、個人での海洋散骨を検討している人は、判断の難しい部分だけ業者に頼るというのもおすすめです。
頼ることは、故人を軽んじることではありません。むしろ、最後のお別れの日を安心して迎えるためのあなたの優しさです。

海洋散骨専門の業者に頼むのがおすすめです。



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