「大切な故人を空へ還してあげたい。」
そう思ってバルーン葬を調べ始めた方に、先にお伝えしておきたいことがあります。
風船に入る遺骨は20グラムから50グラムほどで、火葬後に残る遺骨は1キロから2キロありますから、その大半は手元に残るということです。
全部を空へ還せると思っていた方にとって、これは予想外の事実ではないしょうか?
では残りの遺骨はどうするのか。それを決めないと、業者に申し込むこともできません。
そこでこの記事では、バルーン葬の仕組みや費用の話に加えて、残った遺骨をどう扱うか、天候で延期になると何が起きるか、墓じまいから進める場合に増える手続きまで全て解説します。

バルーン葬に関する疑問が解決できるでしょう。
バルーン葬の仕組み
バルーン葬とは、粉状にした遺骨を大型のゴム気球に納め、ヘリウムガスで浮かせて空へ放つ散骨の一種です。
気球は上昇するにつれて外側の気圧が下がるため膨らみ続け、限界まで伸びたところで破裂します。その瞬間に遺骨が拡散し、大気中へ還ります。
海に撒くか、空へ放つか。
撒く場所が違うだけで、法律上の位置づけは海洋散骨と同じ系統に入ります。

特別な葬送ではなく、散骨の一形態だと理解しましょう。
関連記事:散骨の種類は何がある?費用・法律・後悔しないための選び方を解説
遺骨は粉骨してから納める
そのままの形では風船に入りません。
事前に遺骨を粉状にする粉骨という工程を経て、指定された分量だけを納めます。
粉骨は基本料金に含まれていることが多いですが、長く墓に納められていた遺骨は水分を含み、土や骨壺の破片が混ざっています。
乾燥と選別の作業が加わるため、5000円から2万円程度の追加費用が発生します。
墓じまいをきっかけに検討している方は、遺骨が土中にあった年数を問い合わせの最初に伝えてると、見積もりのずれを防げます。
上空で破裂するまでにかかる時間と高さ
放球からおよそ1時間半から2時間かけて上昇し、高度30キロメートル前後で破裂します。
上昇速度は分速300メートル前後です。
直径2メートル前後で放たれた気球は、上空で10メートル級まで膨張します。地上から目視できるのは放球後の数分間だけで、それ以降は肉眼で追えません。
破裂の瞬間を見ることはできず、映像として記録されるものでもありません。
当日ご家族が体験するのは、風船が小さな点になって消えていくまでのその数分間です。
この点を知らずに参列すると、儀式が終わったという実感が持てないまま解散することになります。

放球後に遺骨を回収する手段はない
一度手を離れた遺骨は戻りません。落下地点を追跡する装置もつけませんし、つけている業者もありません。
海洋散骨であれば、同じ海域へ船で戻ることができます。樹木葬であればその木の下に立てます。
バルーン葬にはその場所がありません。
「やり直しがきかない」という点を、参列するご家族全員が理解してから申し込むようにしましょう。
バルーン葬は法律上問題ない?
散骨を直接禁じる法律が存在しないため、バルーン葬も節度をもって行われるかぎり違法とはされません。
ただし、守るべき条件と、実施場所の制約があります。
厚生労働省は散骨に関するガイドラインを示しており、遺骨を粉状にすること、他人の権利や公衆衛生に配慮することなどを求めています。
墓地埋葬法は遺骨を墓地以外に埋めることを禁じていますが、散骨は埋めるのではなく撒く行為であるため、この規定には直接あたらないと解されています。

「違法ではないが無条件に自由でもない」という位置づけを押さえておいてください。
粉骨が必須とされる理由
遺骨と分かる形状のまま撒くと、遺棄と間違えられるおそれがあるためです。
粉状にすることで、社会通念上の葬送行為として扱われます。
バルーン葬は風船に納めるために必ず粉骨するため、この条件は自動的に満たされます。
放球できる場所は限られている
バルーン葬において、バルーンはどこからでも飛ばせるわけではありません。
空港周辺や航空機の航路にあたる空域では、飛行の安全に影響するため放球できません。
そのため、多くのケースで業者が指定する場所での実施となります。

多くの場合、故人の思い出の土地で放ちたいという思いはほぼ叶いません。
バルーン葬と宇宙葬の違い
バルーン葬が到達するのは成層圏であり、宇宙空間ではありません。
宇宙とされる高度は100キロメートル以上で、気球が届く高さの3倍以上あります。
混同が起きるのは、バルーン宇宙葬という商品名で販売されているためです。

名称に宇宙と入っていてもロケットで打ち上げるわけではありません。
到達する高さと打ち上げ手段が違う
風船で行くのが成層圏、ロケットで行くのが宇宙です。
仕組みが違えば、費用も実施までの期間も変わります。
| バルーン葬 | 宇宙葬 | |
|---|---|---|
| 到達する高さ | 約30キロメートル | 100キロメートル以上 |
| 打ち上げ手段 | ヘリウムガスの気球 | ロケット |
| 費用の目安 | 10万円から25万円前後 | 数十万円から数百万円 |
| 実施までの期間 | 数週間から2ヶ月 | 打ち上げ時期に左右され、1年以上待つこともある |
| ご家族の立ち会い | 可能な場合が多い | 打ち上げ地が海外のことが多い |
パンフレットに「宇宙」という言葉があっても、実際はバルーン葬であることがあります。
確認すべきは、「名称ではなく何で飛ばすのか」です。
実施後に気づいてもやり直すことはできません。

念のために、問い合わせの一言目でロケットなのか風船なのかを聞いておきましょう。
関連記事:宇宙葬とは?費用と種類・後悔しないための選び方を解説
バルーン葬の費用相場
総額の目安は10万円から25万円前後です。
ご家族が立ち会わず業者が代行するプランで10万円前後、立ち会って複数のバルーンを放つプランで20万円を超えます。
問題は、この金額に入っていないものがあることです。
- 粉骨
- バルーン本体
- ヘリウムガス
- 放球の実施
- 証明書の発行
代行プランであれば、この範囲で完結します。実施後に写真や動画が届き、証明書が郵送されて終わります。
ご家族が現地へ行かない分、費用は最も抑えられます。

遠方にお住まいの方や体調面で移動が難しい方には現実的な選択肢です。
あとから加算されやすい費用
見積もりに含まれず、あとから必要になる費用もあり、合計すると数万円から十数万円上振れします。
以下をご覧ください。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 立ち会い時の交通費と宿泊費 | 実費 |
| バルーンの追加 | 1個あたり2万円から5万円 |
| 土中にあった遺骨の乾燥と選別 | 5000円から2万円 |
| 天候不良で延期になった際の再訪費用 | 実費 |
| 手元に残す遺骨を納める容器 | 5000円から5万円 |
| 残った遺骨の永代供養 | 3万円から10万円 |
| 骨壺や納骨袋の処分 | 3000円前後 |
下から3つは、バルーン葬の見積もりには載りません。
しかし、遺骨の大半は手元に残るため必ず発生します。

バルーン葬の実質的な総額はこれらを足した金額で考えてください。

海洋散骨と比べたときの費用感
金額だけを見れば、海洋散骨の代行散骨プランのほうが安く収まります。
3~7万円程度で実施でき、しかも遺骨を全量撒くことができます。
バルーン葬が高くなるのは、風船とヘリウムガスという資材費に加え、天候の条件が整う日を待つ人件費が乗るためです。
そして全量は還せないため、残った遺骨の費用が別途かかります。
総額で比べると、海洋散骨とは倍近い差が出ることもあります。

貸切(チャーター)型の海洋散骨だと数十万円しますが。
バルーン葬の申し込みから当日までの流れ
バルーン葬の問い合わせから放球まで、最短で2週間、余裕をみて1ヶ月から2ヶ月かかります。
粉骨に1週間から2週間、そこから天候の条件が整う日を待つためです。
準備に必要な書類
火葬許可証または埋葬許可証の写しと、申込者の身分証明書を提出します。
遺骨は宅配便で送るか直接持ち込みます。
墓地に納められている遺骨を使う場合は、これに改葬または分骨の手続きが加わります。
取り出す前に自治体の許可が必要になるため、実施までの期間が1ヶ月以上延びると考えてください。
改葬前の大まかな手続きに関しては、以下の記事で解説しています。
関連記事:墓じまいに必要な行政手続きとは?改葬許可申請の流れや必要書類
当日の進行
集合から解散までだいたい1時間前後です。
現地で業者から説明を受け、遺骨が納められたバルーンを確認します。黙祷や献花の時間をとったあと、ご家族の手で空へ放ちます。

あとは風船が見えなくなるまで見上げるだけです。
読経を望む場合は僧侶を自分で手配する必要があり、そもそも同行を認めていない業者もあります。
宗教儀礼を伴う葬送を想定している方は、この点を最初に確認しておきましょう。
天候で延期・中止になったときに起きること
バルーン葬は、雨天・強風・雷・厚い雲のいずれかで実施できなくなります。
地上風速がおおむね5メートルを超えると気球が正しく上昇せず、低い高度で破裂したり想定外の方向へ流されたりするためです。
判断は当日の朝に下され、前日まで問題なくても朝の時点で中止になります。

もし全国から親族を集めていた場合かなりの負担になります。
- 1度延期したことで2度目に集まれなくなって当初の半分の人数で実施した
- 3度延期が続いて最終的に代行に切り替えた等
このように、仕事や介護の予定を調整して集まった方にとって、朝の一本の電話で予定が消えることの負担は小さくありません。
そのため、以下の回避策を事前に家族と共有しておくのがおすすめです。
- 日程を1日に賭けないこと
- 代替日を2つ以上押さえたうえで声をかえる
なお、契約前には、延期時の追加費用・延期できる回数と期限・代行への切り替えが可能かの3点を確認しておきましょう。
バルーン葬が向いている人・向いていない人
向いているか否かの判断の軸は3つです。
- 遺骨が戻らないことに納得できるか
- 日程に余裕があるか
- 親族の同意があるか

この3つがそろえばバルーン葬は良い選択になります。
- 墓じまいを済ませ、遺骨の行き先を探している
- 実施日が動いても対応できる日程の余裕がある
- 参る場所がなくても心の整理がつく、または別に確保している
- 費用より、故人の希望を優先したい
ご覧のように、故人が空や自然に還ることを望んでいて、遺骨の一部を手元や永代供養に残すことに家族が合意している場合は検討してもOKです。
- 命日や法要の日に合わせて必ず実施したい
- 遺骨のすべてを空へ還したいと考えている
- 宇宙空間へ届けることを望んでいる
- 手を合わせる場所が必ず必要だと感じている
親族の中に1人でも反対している方がいて、話し合いがついていない場合はおすすめしません。
バルーン葬の業者の選び方
業者選びで確認すべき確認すべき項目は以下の5つです。
- 実績
- 粉骨の場所
- 延期の規定
- 立ち合いの可否
- 証明書の発行

この5つを聞けばその業者の姿勢はおおよそ分かります。
契約前に確認する項目
電話やメールで問い合わせた際、以下に即答できるかどうかも判断材料になります。
曖昧な回答が続く業者は避けてください。
- これまでの実施件数と、事業を続けている年数
- 粉骨を自社で行うのか、外部に委託するのか
- 遺骨を預かってから放球するまでの保管方法と保管場所
- 天候不良で延期になった場合の費用と、延期できる回数
- ご家族が立ち会えるかどうか、放球場所はどこか
- 放球証明書や、当日の写真と動画が提供されるか
- 手元に残す遺骨の返送方法と、その費用
注意したい業者の特徴
料金の安さだけを前面に出し、含まれる範囲を説明しない業者は避けましょう。
こういう業者は、あとから加算される項目が多く、結果的に割高になる傾向があります。
また、以下のいずれかに当てはまるようなら他社と比較して決めてください。
- 契約を急がせる
- 延期規定の説明をしない
- 遺骨の保管方法を答えられない

あなたの大切な故人の遺骨をあずける相手は慎重に選びましょう。
バルーン葬におけるヘリウムと環境をめぐる論点
バルーン葬では、ヘリウムの供給問題と風船を空へ放つ行為への批判については知っておく必要があります。
知ったうえでバルーン葬を選択するかどうか決めましょう。
ヘリウムの供給事情が費用に与える影響
ヘリウムは天然ガスの採掘に伴って得られる資源で、産出する国が限られています。
そのため、供給が滞れば価格が上がり、バルーン葬の料金にそのまま反映されます。

過去にも世界的な供給不足が起き、風船を扱う業界全体に影響が出ました。
業者によって料金に幅があるのも、時期によって価格が変わることがあるのも、この資源の性質が背景にあります。
見積もりを取ったあと実施まで数ヶ月空く場合は、料金の有効期限を確認しておいてください。
風船を放つことへの環境面の指摘
破裂した風船の破片が地上や海に落ち、生き物が誤って口にする可能性が指摘されています。
この理由から、イベントでの一斉放球を自粛する動きが各地で広がっています。
バルーン葬の業者の多くは、自然に分解される天然ゴム製のバルーンを使いますが、それでも分解には時間がかかるため、負荷がまったくないとは言えません。
この点をどう受け止めるかはご家族の考え方によります。
故人が自然を大切にしていた方であれば、話し合う価値のある論点です。

気になる方は使用するバルーンの素材を業者に確認しておきましょう。
バルーン葬に関するよくある質問
バルーン葬を検討中の方から多く寄せられる質問をまとめました。
気になる質問をチェックしてみてください。
分骨証明書は必要?
遺骨を分けて一部を永代供養墓などへ納める場合に必要です。空へ還す分については求められません。
火葬場、または現在お墓のある墓地の管理者へ申請すると発行されます。
納骨先が求める書類を先に確認してください。
参列できる人数に制限はある?
業者やプランによりますが、10名前後までとしていることが多くなっています。
放球場所の広さと、安全確保のための制限です。大人数での実施を希望する場合は、問い合わせの段階で相談してください。
人数によっては受けられないこともあります。
遺骨がどこへ落ちたかは分かる?
分かりません。上空で拡散するため、落下地点を特定する手段はありません。
これはバルーン葬の性質であり、業者の姿勢の問題ではありません。
場所を定めて手を合わせたい希望がある場合は、海洋散骨や樹木葬のほうが適しています。
ペットの遺骨でも行える?
多くの業者が対応しています。
遺骨の量が少ないため、人よりも高い割合を空へ還せます。
人とペットの遺骨を同じバルーンに納められるかは、業者によって対応が分かれます。
希望がある場合は、問い合わせの段階で伝えてください。
まとめ
バルーン葬で空へ還せるのは、遺骨のごく一部です。
そのため、残りの遺骨の行き先もあわせて決めておくことが重要になります。
手元に残す分と永代供養へ預ける分を先に確保し、残った範囲でバルーン葬を申し込む。
この順序を守れば、費用の見通しも立ち、改葬の手続きでも困りません。
また、業者選びでは、実績と延期規定と遺骨の保管方法を必ず確認してください。
やり直しがきかない選択だからこそ、時間がかかっても、全員が納得して空を見上げられる状態を作ることに価値があります。

急ぐ必要はありませんからね。



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